プラスチックな音楽

これも、僕が大学生の頃に書いたショートショートの小説である。読んでいただけると幸いである。

 曲作りに悩んでいたアーティストKは、ある博士Nに曲がどんどん作れるような装置を作ってほしいと依頼した。Nは開発に苦労したが、完成させることができた。NはKに、この装置を次のように説明した。

「このヘルメットのような装置を被ると、誰でもすぐに作詞・作曲ができ、曲を作ることができる。どんな曲ができるかは、K君の気分次第だ。例えば、喜びならポップスといった明るい曲、怒りなら激しいヘビメタ、哀しいならバラードといったしんみりとした曲、楽しいならリズム感のある曲といった具合だ。作詞もK君がどんな気分なのかをこの装置が言語化することで完成させられる。自分だけのオリジナルの曲をつくることができ、世界でたった一つの音楽をつくれる素晴らしい装置だ!」

 後日、NはKにこの装置の使い心地を聞いた。すると、Kはくたびれた様子でこう答えた。

「確かにどんどんアイデアが湧いてきて、最初のうちは素晴らしいと思いました。しかし、この装置を使うとものすごく体力を使う感じがあり、1日中眠ってしまうほど疲れてしまいます。さらに、使うたびに心が繊細になり、情緒不安定になりました。これじゃあ自分の体が持ちません!」

 創造か体、あなたはどちらを取りますか?


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