これも、僕が大学生の頃に書いたショートショートの小説である。読んでいただけると幸いである。
ひねくれ者のA博士は、絶対に役に立たないであろう穴あけパンチの開発に勤しんでいた。それは、正確に穴を正しい位置に空けるのが難しい穴あけパンチである。
これは、通常の穴あけパンチの10倍もの押す力が必要である。また、「お前には俺を操ることはできない」などと言って穴を空けたい位置に持っていこうとすると、穴あけパンチの方からずらしにかかる。さらに、根拠もないのに「お前には才能などない」や「そういうところがお前のダメなところだ」などと訳の分からない悪口を言って集中力を奪う。これは誰が使ってみても得をしないだろうと思い、試しにa助手に使わせてみた。
後日、A博士はa助手に例の穴あけパンチの使い心地を尋ねた。すると、a助手は意外にも嬉しそうな顔でこう言った。
「確かに最初のうちは、たかが紙に穴を空けるだけなのになぜこんなに苦労しなければいけないのかと思いました。しかし、あきらめずに使い続けていたら、穴あけパンチの方から、段々と私のダメなところを正確に教えてくれるようになり、それを改善したら色んなことが良くなっていったんです。力がかなり必要だったので、腕力を鍛えるいい機会にもなりましたし、位置をずらしにかかるなら絶対に動かないようにしようと八方ふさがりでやろうと工夫もできました。以前の私と比べてかなり強くなりました。」
もしかすると、無駄な発明などないのかもしれない。
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